
プロライターの皆さんにインタビューし、それぞれの信念や培ってきたスキルについてお話を伺う「【プロライターにインタビュー】シリーズ」第2弾。今回は、歯科医療の分野を中心に、ライティングのみならず編集の仕事でも活躍している中島香菜さんにお話を伺いました。
卓越したコミュニケーション力を武器に、クライアントと固い信頼関係を築いていく中島さんの仕事の極意とは?
【ライター中島香菜】 プロフィール:神奈川県出身。早稲田大学教育学部卒業。営業職や事務職などを経験し、かねてより関心のあったライターに転身。企業専属のライターとして歯科求人広告などのライティングを1年ほど経験したのちに、フリーランスライターとなる。取材や編集にも対応可能。強みである歯科を中心に、ジャンルを問わず活動中。 |
ホワイトな職場を辞め、全くの未経験からライターへ
―現在はフリーランスのライターとして活躍されていますが、その前は専属のライターとして会社に勤めておられたそうですね。
はい、歯科医院の求人広告を担当するライターでした。その会社は実は3社目で、新卒で入った1社目ではITの営業として働き、2社目の保険会社で事務をしていました。保険会社は5時きっかりに上がれるホワイトなところだったので(笑)、そこで勤務しながらライターとしての転職先を探したという感じですね。もともと、文章を書く仕事に就きたいと思っていたので。
ライティングは全くの未経験だったので、未経験でも採用してくれる会社を探しました。その合間に、単発で記事を募集しているところに応募したり、「フリーライターのよりどころ」に登録したりして、ちょっとずつ経験を積んでいきましたね。で、大学時代に歯科助手のアルバイトをしていて、歯科医院に関する知識も少しはあったので、それも入社の決め手になりました。
―ライターとして本格的に仕事を始める前から、歯科医療の分野についてはある程度ご存知だったんですね。
とはいえアルバイトだったので、雰囲気とか、薬品の名前くらいだったのですが……。ただ、歯科医師の先生の中には癖が強い方も結構いらっしゃるので、たとえ実力のあるライターさんであっても慣れないことも大いにあるんです。その点、私は歯科医院で働いていたので、そこは強みでしたね。
―求人広告ライター時代は、具体的にどんなお仕事をされていたのですか?
歯科医院の広告求人だけでなく、特集やインタビュー、パンフレットの記事も担当していました。特集やインタビューだと2000~3000字くらい、広告求人だと500字くらいで、最初のうちはリライトや先生との交渉も含めて一日10本くらいこなしていました。歯科医院の求人広告って、凄く数が多いんですよね。
あと、原稿の字数自体は少ないんですが、私にはそれが逆にハードル高くて、「あと1字入らない!」なんてしょっちゅうでしたね(笑)
―あるあるですね(笑)
以前の会社のコンセプトが「職場が見える求人広告にしよう」というものだったので、給与とかの数字面からは見えづらい職場の雰囲気や、働いている人の様子が見えるような記事をメインにやっていました。
先にも言った通り、先生の中には癖の強い人も多いので、「もういいだろ」というような些細なところを意固地になって何度もリライト要求されたり、「本当に伝える気ある?」と言いたくなるような小難しい文章を書かれたりするんですよね。
でも、それを乗り越えて初めて求人誌が出来た時には、やっぱり「わーっ!」と感動しましたね。自分で書いた原稿が、自分の名前と一緒に世に出る……。webや学校に送る求人票もあるんですが、雑誌は何回出ても感動しますね。「紙媒体はいいなあ」って。
独立当初は、凄まじい不安感とワクワク感がないまぜに
―それだけ需要も実績もあるのに、わざわざ会社を退職してフリーランスに転向されたきっかけは、一体何だったのでしょうか?
歯科医療の分野ばかりずっとやってきたので、「そろそろ違うことを書いてみたい」と思うようになったんです。で、まずは時間を見つけて土日にでもやってみようと色々探していた時に、株式会社YOSCA(ヨスカ)と出会ったんですよ。
最初に声をかけていただいたのはやっぱり歯科のお仕事だったんですけど(笑)、直接お会いして相談してみたら「もっと色々やれるよ」と言ってもらえたので、「じゃあそれもそれも!」と受けているうちにどんどん自信をつけていきました。はじめは年末の休暇を利用して1日5本程度のペースで執筆し、その後は月2、3本くらいの記事をこなしていましたね。
―いざ会社を辞め、フリーランスとして独立した感想はいかがでしたか?
やっぱり最初はめちゃくちゃ不安でしたね。予定の詰まっていないカレンダーを見ると「どうしよう」とひたすら焦ってしまって、後先考えず仕事を詰め込んで失敗する、なんてことも……。でも、不安と同時に「やりようによっては仕事の幅や人付き合いの幅が広がる、何でも自分次第だな」というワクワク感もいっぱいでした。
実際、少しずつ知識や経験は広がってきているのを実感します。今では、歯科医療だけではなく、外科や内科などの医療現場における教育系の記事を書かせていただいたり、YOSCAさんで編集に携わったりしています。
ライターと編集者、ふたつの顔で見たものは
―今、仕事の軸としては大きく分けて「編集」と「ライティング」のふたつがある、というイメージでしょうか。
はい。仕事の比率としては、少し前までは半々くらいで、ライティングの方が少ない時期もありました。YOSCAさんではほぼ編集を担当していて、それ以外ではライターとして活動していますね。
編集をする過程でお母さんライターと関わることが多いんですけども、やっぱり在宅で仕事をしていると、全然外部の人間とコミュニケーションを取られない方も多いんですね。ですから、やりとりをする時にはまず「お子さんどうですか?」と近況を伺ったり、「納期、余裕を見ておきましょうか?」と配慮したりするようにしています。
―マネジメントを受ける側としては、とてもありがたい気遣いですね。
編集者としては、雑談というか、ライティングと関係のないお話をするのも仕事の一部だと思っています。そういうコミュニケーションの取り方をしていると、何となく仕事をお任せしやすい気がするんですよね。お母さんライターの方から、「風邪をひかないようにね」と、まるで娘のような扱いを受ける時もあります(笑)
―繊細なコミュニケーションが中島さんの魅力のひとつなんですね。では、編集とライティング、それぞれに譲れないポリシーがあれば、伺ってもよいでしょうか?
編集に関しては、「情報を流すだけの存在」にはならないように気を付けています。クライアントにはクライアントの言い分、ライターさんにはライターさんの言い分があるので、まずはそれぞれをきっちり理解すること。そしてそれをより分かりやすい形で双方に渡し、「私がいたから案件がスムーズに進んだんだ」と言えるような、潤滑油的な編集者でありたいと考えています。
ライティングに関しては、とにかく「だらだら書かないこと」ですね。時間があっても、スピード感を落として書くと、だいたいグダグダな記事になってしまうので。また、インタビュー案件であればインタビュイーの言葉を尊重する、「文章に自分の主観を入れすぎない」よう肝に銘じています。
―それでは最後に、中島さんのやりたいこと、今後の目標について教えてください。
「女性の生き方」をテーマにした記事を書きたいなと考えています。お母さんライターの方々とやりとりをしていく中で、女性の働き方や社会のあり方にも興味が出てきたので。
育児をしながら家事も仕事もやる「スーパーお母さん」みたいな女性が注目されますけど、そういう風潮があまり好きじゃなくて、もっと女性の働き方が多様化したらいいんじゃないかと思うんですよね。
専業主婦が悪いとは思わないし、週に1、2本記事を執筆して、「マイペースに楽しめればいいわ」という女性だったらそれでいいし、家事は夫に任せて仕事をガンガンやる、みたいなタイプでもいいし。「これが唯一絶対の正解」というような認識が存在しているのはイヤなので、そういう話を発信していけたらなと思います。
その他にも、旅行に関する記事や書評も書いてみたいですし、「歯科」をベースにしながら、もっと幅広く挑戦していきたいですね。
ライターにオススメしたい著書
ライティングにおいて実用的かというと「?」ですが、一流と呼ばれる方の取材ノウハウを勉強できます。プロのライターを名乗る心構えについても学べるので、ライターとして名を上げたいと思う方は読んでおいて損はないと思います。 |
主な活動実績
歯科衛生士求人雑誌「Quacareer」
歯科医師求人雑誌「GRANDE」
リハビリ職求人雑誌「POStyle」
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