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美容師、化粧品販売員からライターに転身した、異色のキャリアをもつプロライターのYさん。今ではさまざまな媒体で執筆する売れっ子ライターですが、もともとは文章を書くのが大の苦手だったのだとか。

そんなYさんに、文章力や企画力の磨き方など、多くのライターがぶつかる壁を乗り越える方法を伺いました。

<プロフィール>
【ライター Yさん】
美容ジャンルを中心に活躍する女性ライター。美容誌免許を取得し、実際に美容室に勤務した経験がある。その後は化粧品会社に転職し、化粧品販売の仕事に従事。このように美容の現場で働く中で得た専門知識を武器に、ウェブや雑誌などさまざまな媒体で活躍中。

大好きな美容に関する情報を発信するため、ライターに転身

―ライターに転身されたきっかけを含め、これまでの経歴を教えてください。

美容専門学校を卒業して資格を習得し、美容室に就職。しばらくして化粧品会社に転職して、化粧品の販売員として売り場に立っていました。お客さまの髪や肌と直接向き合って、プロとして改善のご提案をする……そんな現場での仕事を長く続けてきたんです。その中で、美容商材の広告やPRの仕事に次第に興味をもつようになりました。でも、具体的にどうやったらいいかがわからなかったんですよね。

そんなときに目にとまったのが、コピーライターという仕事。広告とコピーは常にセットであることに気がついて、「コピーライティングを学んでみよう!」と思い立ち、さっそく調べて講座へ通いました。

私のライターとしての出発は「ライターとして記事を書きたい」ではなく、「美容に関する情報を発信したい」という思いに動かされてのものだったんです。

―ライティングではなく、コピーライティングから学び始めたんですね。

コピーライターになれば、広告やPRの仕事に関われることに気づいたので。思い返せば、販売員の業務の中でも、新商品のキャッチコピーを考える仕事が特に楽しかったんです。お客さんの興味を引くのはどんな言葉か、どうやったらその商品の魅力が伝わるか、一生懸命に考えていました。

実際に講座へ通ってみると、「私がやりたかったのはまさにこれだ」と目が覚めるような思いでした。短い言葉で表現することの難しさに触れて、でもそれはとても興味深く、どんどん引き込まれていきましたね。

そしてこの頃から、文章で表現する仕事自体に興味をもつようになりました。それで、短い言葉に限定されたコピーライティングだけじゃなくて、もっと長い文章も書けたほうがいいなと考えるようになって、ライティングを学べる学校にも通い始めたんです。

企画力を磨くカギは、身近なヒントに敏感になること

―ライティング講座はどうでしたか?

とっても楽しかったですよ!でも実は私、昔から文章を書くのが大の苦手でして……国語の作文を書く授業なんか、嫌で仕方なかったんですよ。なので、「まさか自ら進んで文章を書く勉強をするとはなぁ」という自分に対する驚きはずっとありましたね(笑)。

そんな私もライターとしてやっていけているので、文章があまり得意ではない方も、ライターの道を諦めることはないと思います。そのあたりは訓練次第でどうにかなるし、それにライターに求められるのは文章力だけではないですから。

―その「ライターに求められること」とは何でしょうか?

いろいろあると思いますが、今個人的に課題になっているのは企画力ですね。編集者は、きれいでわかりやすい文章を書けることだけではなく、おもしろい企画を出せることも重視していると思います。その期待に応えられるかどうかが、仕事を任せてらえるかどうかの分かれ目なのかなぁと。私自身、いい企画を出せなくて悔しい思いをしたこともありましたから……。

そんな経験から、最近は常にアンテナを張って情報を収集し、文章を見る人が興味をもってくれるような話題を提供できる力を養うように心がけています。

―具体的にはどんなことをしているんですか?

日頃からさまざまな媒体を研究しておくことは大切にしていますね。自分の興味を超えた範囲にも目を通して、広く知識を蓄積するようにしています。

それから、どんな読者に向けて書かれているのかを把握した上で、書き方にも注目します。文体や言い回しはもちろん、全体の雰囲気も意識。それらすべてを自分のものにして、使い分けられるようにしたいなと思っています。

あとは、なるべくたくさんの文章を読むようにも努めています。本や新聞でも、町で見かけたフリーペーパーでも……活字があればそれとなく目を通すようになりました。ひらめきの種や素敵な表現はいろいろなところに転がっていて、それに気づけるととても勉強になりますよ。

初心者時代の課題は「文章力」と「スケジュール管理」

―ちなみに、初心者時代にぶつかった課題はありましたか?

先にもお話ししたとおり、私は文章を書くのが苦手だったので、そこは大きな課題でしたね。原稿を全然書き進められなくて、「なんでライターになったんだろう?」思うこともあったほどで……。でも、何度も壁を乗り越えたおかげで、今は文章で悩むことは少なくなりました。文章力は、数をこなすことである程度鍛えられると思います。

それから、フリーになったプレッシャーで、がむしゃらに頑張りすぎた時期もありました。寝る時間を削って働いたことで、睡眠障害になってしまって……自律神経も正常に働かなくなってしまったんです。それで、生活を見直さざるをえなくなりました。

具体的には、朝は音楽をうまく活用しながら体を起こして、パソコンを開くことを仕事のスタートの合図にしました。自分で生活にリズムをつけるんです。そうやって集中しやすい環境を意識的に整えることで効率が上がり、短時間で多くの仕事をこなせるようになりました。これを徹底することで、自ずとしっかり休めるようになりましたね。

また、スケジュールを詰めすぎないことで、急な依頼に対応しやすくなったのも大きなメリットでした。やりたい仕事を逃さない体制をつくるよう、日頃から気をつけています。

お互いに支え合い、刺激し合える仲間とチームをつくりたい

―フリーランスにとって体調管理は最重要課題ともいえますよね。

まさしく。私は自身が体を壊した経験から、日頃から体調管理に気をつけるのはもちろんのこと、もしものときに助けてくれる仲間がほしいと考えるようになりました。万が一体調を崩して手持ちの仕事を完遂できなくなってしまったとき、代わりのライターを用意できれば、ライターとしての信頼度はぐっと上がるなぁと思ったんです。

体調を崩したときだけではなくて、スケジュール的に受けられない案件を回すのもいいですよね。もちろんその逆に、私も仲間の助けやきっかけになれたらうれしいです。最近は、そうやって支え合えるフリーランスのチームをつくりたいと思っています。そうすれば、今よりもっと仕事が舞い込んできやすくなるはずですから。

―困ったときに支え合えるフリーランスのチーム、できたら心強いですね。

そうですね。リスクヘッジ的な意味もありますが、私がフリーランスのライターになって一番よかったと思う点が、たくさんの人たちと出会いがあることなので……いい刺激をくれる仲間をもっとつくりたいという思いも背景にあります。人との出会いは、すなわち新しい世界との出会い。そうやって、自分の幅を広げていけたらと思います。

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中島香菜

神奈川県出身。早稲田大学教育学部卒業。営業職や事務職などを経験し、かねてより関心のあったライターに転身。企業専属のライターとして歯科求人広告などのライティングを1年ほど経験したのちに、フリーランスライターとなる。取材や編集にも対応可能。強みである歯科を中心に、ジャンルを問わず活動中。 実績紹介ページ