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二拠点生活を送るライター

「地方で暮らす」という希望を実現するため、生まれ育った首都圏から滋賀へ移住し、月に一度東京に通うライター 菊池百合子さん。

このスタイルだからこそ、自分が本当にやりたい仕事にチャレンジできていると話します。

働き方、ひいては生き方が多様化する昨今。菊池さんの選択は、ライターとしてのあり方や自分らしさについて考えるヒントになるかもしれません。

滋賀で暮らし、月一で東京。心地いいバランスの二拠点生活

――菊池さんの現在のライフスタイルについて教えてください。

今は滋賀県長浜市で暮らしています。長く歴史がつむがれてきた琵琶湖に近い街で、梅雨でも夏でもすーっと風が吹いて気持ちがいい……そんな環境です。

でも、月に一度は東京に行っています。私は幼い頃からずっと首都圏で育ってきたので、東京にいる人に会いたいときや「東京のあの場所に行きたいな」と思うときもあるんです。

こうやって東京での時間もたまに確保するライフスタイルが、今のところ自分にとって一番心地いいバランスだと感じています。

――滋賀をベースにした二拠点生活なんですね。どうして滋賀へ引っ越そうと思ったんですか?

地方で暮らしてみたいからです。小学生の頃から、都心から離れることに憧れがありました。引っ越し先を探していたときにたまたまご縁があったのが滋賀県長浜市でした。

――仕事の依頼は滋賀のクライアント様からが多いんでしょうか?

いえ、ほとんどが東京からのご依頼ですね。

――滋賀で生活していて、仕事に影響はありませんか?

月に一度は東京に滞在し、対面での打ち合わせや取材をしています。

滋賀への引っ越しを決めたことで、仕事での人間関係にも変化がありました。今ご一緒している方々は、ありがたいことに私のライフスタイルをご理解くださっていて、そういう方々と記事を作れることが心強いですね。

自分の足で立って生きている地域の人たちが気づかせてくれたこと

――実際に滋賀で暮らしてみて、いかがですか?

楽しいですよ!私が住んでいる街は交通の便が良くて買い物にも困らないし、引っ越してから苦労したことも特にないですね。

二拠点生活を送るライター

――滋賀で暮らし始めたことで、変化したことはありますか?

自分と向き合って思考する時間が増えたこと、でしょうか。
今住んでいる長浜市では、移住してきた人も地元出身の人も一緒に語らえる関係を、たくさんの先輩たちが長い時間をかけて育んできてくれていて。引っ越してきた私も、先輩たちお互いにと「今はこんなことをしたくて」「チャレンジしてみたらいいんじゃない?」と自分自身のことを話す機会が多いんです。お互いに「自分」のままで向き合う感覚ですね。

都心だったら、初対面の人と話すときに職業や肩書きを伝えることが多いですが、それってひとつの「仮面」であって、その人そのものではないと考えていて。滋賀に引っ越してからは、お互いの職業や肩書きを知らないままに話していることも多々あります。「仮面」は二の次ですね。

それは、“一緒に生きていく”感覚があるからかなと。同じ地域に今住んでいて、お互いに影響し合いながら暮らしていく。「仮面」のままで向き合っていたら、一緒に生きていきにくいですから。

――人と人との距離が近いというか、じっくり時間をかけてお互いを知ろうとするというか……都心ではなかなか築きにくい人間関係があるんですね。

そうかもしれませんね。東京にいるとき、いつも「早く滋賀に帰りたいなぁ」と思うんです。引っ越して一年も経たないうちに、滋賀にいる大切な人たちの顔がたくさん思い浮かぶようになったのは、私を受け入れてくださっている方々がいるから。たくさんのお兄さん、お姉さんたちが当たり前のように私の滋賀での暮らしをサポートしてくれていて、すごく幸せなことだと実感しています。

東京で育った私が地域で暮らすからこそできること

――現在も仕事の多くは東京のクライアントからの依頼とのことですが、滋賀でやっていきたいことはありますか?

はい。今は一年をかけて隣町のお兄さんたちを取材しているところです。

――隣町のお兄さんたち……?

地元を大切に思っているお兄さんたちが結成した、ONE SLASHというチームです。地域にすでにある豊かな資源の価値を見直し、ネガティブに捉えられていることもポジティブに変換しながら、地元の魅力を発信しています。

例えば、耕作放棄されていた豊かな土壌を活かしてブランド米をつくったり、農作物を荒らしてしまうために“害獣”と呼ばれる鹿や猪の肉を、おいしいジビエ料理としてふるまったり。そんな彼らとじっくり関係を築きながら取材して、彼らのことを表現しようとしています。

――一年をかけた取材って、なかなか経験できないですよね。

そうですね、私も初めての試みです。東京の奥多摩で活動しているまちおこし団体「Ogouchi Banban Company」を長期間取材してインタビューしたことで、インタビュアーとインタビュイーがお互いに影響し合いながら取材していくことのおもしろさを強く実感したことがきっかけです。彼らの取材をとおして、滋賀でやりたいことを初めて見つけた感覚がありました。

あとはもちろん、一年かけて取材したいと思わせるだけのパワーが「ONE SLASH」の彼らにあったことも大きな決め手です。

――ONE SLASHの方々には、菊池さんから「インタビューしたい」と提案したんですか?

いえ、代表の方が「インタビューしてほしい」と声をかけてくれました。とはいっても、最初から仕事ありきで話していたわけではなくて、7時間ほどじっくりお互いのことを話した後に「じゃあ、一緒にやってみよう」と決めたんです。

地域で仕事をする場合、まずは“同じ街で暮らしている人”として認識してもらい、関係が深まって初めて仕事を依頼するかどうかの話に至るように感じますます。じっくり関係を築きながら向き合えることが私には新鮮で、今も「ONE SLASH」のみなさんと時間を積み重ねながら関係を育てていることが楽しいです。

二拠点生活を送るライター

――菊池さんの新たなチャレンジ、うまくいくことを祈っています。

ありがとうございます。滋賀で暮らしたり東京の奥多摩に取材で通ったりしてから気づいたことがあって、私がやりたいのは、地域で生きる人たちを長期間かけて少しずつインタビューしていき、“外の目線”をもった私なりの表現で発信していくことだなって。

今回のONE SLASHとのタッグは、まさに私の“やりたい”を形にするプロジェクト。都心と地域の両方に触れている自分の視点を意識しながら、彼らと一緒に滋賀でいいコンテンツをつくっていきたいと思います。

photo by 小松﨑拓郎(https://twitter.com/takurokoma

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