医療分野での実績が豊富で、ブックライターとしても活躍する小松田久美さん

出版社や編集プロダクションなどに勤めず、未経験から医療系ライター、ブックライターへと成長、活躍する小松田さん。経験のない状態からどのように仕事を学び、獲得してきたのか。目標実現のために人や情報を引き寄せる秘訣についてインタビューしました。

【ライター小松田久美】
プロフィール:建築会社秘書、ベンチャーIT企業勤務を経て、宣伝主催の「編集・ライター養成講座」を受講。卒業制作で優秀賞を受賞したことをきっかけに、フリーランスライターに転向。現在は医療系分野での執筆や人物インタビューの他、書籍のブックライターとして月に1冊のペースで執筆中。http://komatsudaworks.com

きっかけは「講座の受講」と「人のご縁を大切にしたこと」

―ライターになったきっかけを教えてください。

ライターになる前は、会社勤めをしていました。建築会社の社長秘書や、ITプロバイダ企業でネットワーク保守管理の担当などです。秘書業務ではビジネスマナーや人のサポートなど、IT企業では苦手だったパソコン操作を得意になりたいという思いで仕事をしていました。仕事は自分に足りないスキルを、いかに補えるかを基準にして選んでいました。

この会社員時代にはライティング業務はありませんでしたが、個人ブログで化粧品のレビューなどをしていたところ、夫が宣伝会議の「編集・ライター養成講座」のパンフレットを持ってきてくれました。副業としてさらに収入が得られるようになるかもしれないと思って、軽い気持ちで受講を決めたのですが、ライターになる大きなきっかけとなりましたね。

医療分野での実績が豊富で、ブックライターとしても活躍する小松田久美さん

―副業のつもりで受講されたとのことですが、講座を受けてからどのようにしてライターを本業にされたのでしょうか?

講座には、本気で編集者やライターを目指す人がたくさんいました。思ったより本気度が高くて、自分との温度差を感じましたが、受講生や講師の方々と同じ時間を過ごしていく内に、私も本気でライターになりたいと思うようになりました。

卒業制作で優秀賞を受賞したことをきっかけに、ライターとして本格的に活動を始めようと、会社と相談して雇用形態を変え、業務を徐々に減らしていきました。それと並行して、講座の講師の方の事務所に遊びにおいでと誘っていただいたんです。そこでご縁をいただいて、原稿を執筆する機会を得、一字一句赤を入れてもらうなどの経験も積ませていただきました。

基本的には営業が苦手なので、周囲の人に「お仕事をください」と言ったことはありません。ただ、お会いした編集者さんなどに小さな経歴書を名刺とセットにして渡したり、関わってみたいと思った人のところには積極的に顔を出してみたり、ということはしていました。その結果、「うちでやってごらん」「ちょっとこれ書いてみない?」と誘っていただけるようになりました。

自分の得意と世間の需要を考え、医療系ライターの道へ

―医療系が得意とのことですが、医療というジャンルを選んだのはなぜですか?

編集・ライター養成講座での講師の言葉がきっかけです。「今は初心者でも、ずっと同じジャンルで書き続けていたら、3年後にはその分野に詳しくなっている。10年続けたら、誰もが必要とする専門家になっているだろう」……この言葉を講義中に聞き、自分が勉強することが嫌ではなく、需要もあるテーマを探した結果、医療に辿り着きました。

今考えると、幼い頃からキュリー夫人や野口英世など医療関係の伝記を読んでいたので、もともと興味があったんだと思います。その後も本が好きでたくさん読みましたが、闘病記やお医者さんが書いた病気に関する本などが多く、医療に対するハードルは低い状態でした。

また、医療は年齢を重ねた時にプラスになりやすいジャンルでもあります。例えば芸能系などは若い人の方が求められやすいかもしれませんが、医療の世界は年を重ねてからの方が求められやすいと考えました。需要と供給を意識したんです。

医療分野での実績が豊富で、ブックライターとしても活躍する小松田久美さん

―医療の最新情報はどのように取得されていますか?

毎年更新されるガイドブックや、医療や美容表現に関わる人たちが登録しているメーリングリストの情報をチェックしています。また、製薬会社や化粧品ブランドの会社の中には、医療の観点から見て表現がおかしくないかや、薬事法上問題がないかのチェックをしてくれる部署があることも。その場合には細かい部分について質問をしたり、やりとりの中で最新情報を教えていただいたりもします。

―医療関係者の取材で意識していることはありますか?

扱うテーマが重いので事実認識と、時間厳守です。医療現場での取材は、本当にない時間をいただくことになります。医師は特に忙しくて食事すらできていない方もいますので、少し早めに終えるなど都合に合わせて、取材時間を分配することもしています。

会社員時代にクレーム対応をしていたことがあったのですが、その時に何分で説明して、何分でお客様の話を聞いて……と時間を意識していたこともあり、今このような取材ができています。

10時間取材し、10万字書くブックライティングの仕事

医療分野での実績が豊富で、ブックライターとしても活躍する小松田久美さん

―現在はブックライティングのお仕事が主ということですが、ブックライティングを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

宣伝会議でブックライター・上阪徹さんの講座を受けて、初めてブックライターの存在を知りました。先生の外部講座で知り合った編集者さんから仕事を依頼されたことが、一冊目を書くことになったきっかけです。最初は何もわからず、編集者さんにサポートしていただき、2000字や4000字の原稿をひたすら積み上げていくという感じでした。

―ブックライティングのお仕事はどのように進めていくのでしょうか?

書籍の原稿は、約10万字程度になります。取材には約10時間かけていて、数回に分けて取材をします。毎日こつこつ書き貯めた原稿は、本の体裁になった段階からは著者さんも入られて修正のやりとりを重ねていきます。

―他のライティングのお仕事と、ブックライティングのお仕事の違いはどのようなところに感じますか?

ウェブでは万が一の時には直すこともできますが、紙の場合は基本的に直せません。また、本は取材相手にとって一生に一冊かもしれませんし、本を出したことによって良くも悪くもその方の人生に大きな影響を与えてしまう可能性があります。紙の本に携わることは、より責任があると思っています。その一方で、奥付に名前が載ることはとても嬉しく、達成感がありますね。

編集者に求められていること、原稿に求められていること

―仕事を獲得する上で、意識していることを教えてください。

編集者さんに対して「この人はどんなライターを求めているか」を意識し、仕事のしやすいライター像を打ち出すようにしています。無理をするわけではなく、できる範囲で編集者さんが動きやすい環境を作ることで、お互いに気持ちよく仕事ができる気がしています。秘書の経験があるため、相手に合わせることは得意なんです。

例えば私は今ジャケットを着ていますが、これはこの格好で行くべき仕事を担当したいという意思表示のためです。打ち合わせなどにも、できるだけ着ていくようにしています。しっかりとした取材をしなければならない案件で、私を思い出してもらいやすくなるのではと考えています。

また、懇意になった編集者さんでも、基本的に礼状などは出すようにしていますね。特に紙媒体の人は紙が好きな印象があるので、メールだけで済ますのでははなく年賀状などを書くようにしています。メールが主流の時代だからこそ、紙で届くととても喜んでくれるんです。

医療分野での実績が豊富で、ブックライターとしても活躍する小松田久美さん

―ライティングする上で、大切にしていることは何でしょうか?

主観を入れないようにすることです。取材相手が言ったことを書き言葉にする“翻訳”はしますが、それ以上付け足さず、そのまま伝えるようにしています。これは書く技術というより、引き出す技術だと思っています。あくまで主役は、取材相手の方。私の役割は、虫眼鏡や拡声器のように相手の声や持っているものをクローズアップして外に伝えることなんです。

―最後に、小松田さんの今後の目標を教えてください。

最近、企画から携わるブックライティングの仕事が増えてきたので、そういった仕事をもっと増やしていきたいですね。また、未経験からライターを始めたこともあり、ライター初心者の方々にアドバイスをする機会も多いので、もっとそういった方々の役に立つことができればと思っています。

ライターにオススメしたい著書

『職業、ブックライター。 毎月1冊10万字書く私の方法』上阪 徹
初めてブックライティングをする人にとても役に立つ一冊です。ブックライティングをするにあたり、どのような手順を踏むのか、資料はどのように分けるのか、何に気を付けて構成していけば良いのかなどが書かれています。ブックライターという仕事を社会的に認知させた、上阪さんの偉大さを感じますね。
『20歳の自分に受けさせたい文章講義』古賀 史健
『嫌われる勇気』を共著で書かれた古賀さんが、文章を書く上で自分に課しているルールなどについて書かれています。古賀さんは取材相手の話したことを、翻訳することを大切にされているのだそうです。堀江貴文さんの『ゼロ』もブックライターとして執筆されていますが、堀江さんご本人にも絶賛されています。
『薬事ハンドブック2017 薬事行政・業界の最新動向と展望』じほう
前年の法改正の内容などが更新されて、毎年新しく発行されています。薬事法に関して、何をしてはいけないのか、その年の医療や製薬周りの流れがまとめられています。目を通すだけでも医療に関することへの拒否反応が減って、原稿の完成度も上がると思います。

撮影協力:BOOK LAB TOKYO
撮影:@miya___miya