「日本文化の魅力を発信したい!」ライターの阿部裕子さんから学ぶブランディングとインタビュー術

「週に一度は着物で出かけていますし、打ち合わせのときでも着物なんですよ」と語るのは、ライターの阿部裕子(あべひろこ)さん。かねてより日本文化、特に江戸時代には関心が高く、日本の魅力を世に発信していきたいとの想いが強かった彼女は、自分をセルフブランディングしていると言います。

そこで今回は、彼女が実践しているセルフブランディングの方法と、それを支えるライタースキルのうち、インタビューのテクニックについて詳しく話を伺いました。

【ライター阿部裕子】
プロフィール:大学卒業後、業界新聞社で記者として勤務。その後、出産を機に退職し、いったんは仕事を離れたものの、子供が大きくなった頃から、地域のフリーペーパー制作を一人で手がける。それがきっかけで「書く」仕事への想いが高まり、フリーのライターとして活動を開始する。日本文化やアウトドア、娯楽に関することの他、人物インタビューを得意とする。朝カフェなどのイベントを開催するなど「人が集まる場」を作るのが好き。

地元小金井市への愛からスタートしたライター業

―大学卒業後、業界新聞の記者をされていたのですよね。それからフリーライターになったのにはどういった経緯があったのですか?

新聞記者は2年半やっていたのですが、出産と育児でいったん仕事をお休みしたんです。その後、35歳くらいになったらまた文章にかかわる仕事がしたいと思い、まずは自作のフリーペーパーから始めました。

住んでいる街・小金井で、地元の魅力を発信しようという思いから作ったんです。さらに、地域の非営利団体で、こどもの遊び場ガイド改訂版の制作リーダーを任されたことで、より「書く」ことに携わるようになりました。

その後、武蔵境をはじめ近隣の地域で、フリーペーパーを制作している会社とコンタクトをとったんですね。そして「お仕事を一緒にしてみませんか?」というオファーをいただき、隣り街の商店街の店舗取材をすることになりました。それがライターとしての最初のお仕事です。

ライターの阿部裕子さんが手がけたフリーペーパー

「日本文化の記事なら阿部さん」と言われるためのトータルブランディング

―現在はどんなお仕事を中心にされているのですか?

最近は、主に日本文化に関する記事を執筆しています。以前から、小金井の魅力、そして東京の魅力、さらに日本の魅力を発信したいという想いがあったのですが、2020年の東京オリンピックに向けて、ますますその想いが強くなりました。

―具体的にどのような記事を書かれているのですか?

主に江戸時代に関することですね。たとえば庶民の暮らし、恋愛事情、当時の宝くじのことなどについて。鎌倉時代や奈良時代と比べても江戸時代は圧倒的に情報量が多いため、図書館でいつも本を20~30冊借りて、日々研究しています。

―そうした仕事はどのようにして獲得したのでしょうか。

大体、自分でメディアに売り込むことが多いです。売り込むことは苦にならず、むしろ好きなくらいです(笑)

―日本文化に関する記事を書くうえで心がけていることはありますか?

日頃、本はあまり読まないという読者にも「阿部さんの書いた文章なら読みやすいし面白い!」と思ってもらえるように書くことですね。私は、何時間も江戸時代について語れるというほどの専門性はありません。そのかわり、自分自身が学んで「おもしろいな。これは他の方にも知ってもらいたい」と思ったことを読者の方にわかりやすく伝えたいと思っています。

また、「日本文化の記事なら阿部さん」と言われるようになりたいですね。そのために、ビジュアルと文章の両方でアピールしています。打ち合わせのときに着物を着て行くこともありますし、名刺の字も毛筆体にしたり。といっても、仕事だけのためというより、私自身が日本文化に親しむ日常を楽しんでいます。皆さんにも、同じように楽しんでいただけたら幸いですね。

インタビュイーの素を引き出すインタビュー術

―ブランディングができていても、ライターとしてのスキルが伴っていなければ仕事は来ないと思います。その点、阿部さんはインタビュー記事の執筆でも多くの実績をお持ちですが、インタビュイーの言葉や魅力を引き出すために心がけていることを教えてください。

事前の情報収集は重要です。たとえばインタビュイーに関する情報がブログしかないとしたら、その人のブログを開設の日の分から全て見るなど。その人のやってきたことや想いなどが時系列でわかると、インタビュイーのことが網羅的にわかるだけでなく、その人のことをより身近に感じることができます。

あと、思いがけない質問をすることで、思いがけない言葉をいただけることもありますし、ほかの媒体で質問されていることは敢えて聞かず、自分らしい質問を考えることも、大事だと思っています。

―インタビューの際に特に注意していることはありますか?

時間に関することですね。まず、インタビューは時間内に終わるよう気をつけています。インタビュアイーは1日のうちの貴重な時間をインタビュイーからいただいている、という認識を忘れてはいけないと思うのです。そして、時間内でどう質問を配分するかが重要です。残り時間に応じて、質問の取捨選択も行います。

また時間内に終わらせるだけでなく、「この人にインタビューしてもらってよかった」と思ってもらえるような文章にすることが大事です。あと、時計を見なくてもある程度時間がわかるように、日頃から時間の感覚を研ぎ澄ますようにしていますね。

―インタビュー原稿を記事に起こすときのコツについても教えてください。

私はインタビューをしている最中に、ある程度構成を考えます。インタビュイーの話の中にある印象的なフレーズやその人らしいエピソードを中心に、記事の構成や見出しを考えます。

―記事を書く際に注意していることはありますか?

わかりやすさを大切にしていますね。特にWEB記事はスマートフォンで読む人が多いため、移動時間などにすっと読める文章、そして「このライターの文章はもう一度読みたい」と思ってもらえる文章を心がけています。

目の前の仕事を丁寧に!そしてアンテナを張り新しい仕事も開拓

―今後の展望についてお聞かせください。

日本文化の記事を中心に執筆しながら、今までになかったインタビュー記事にもチャレンジしたいと思っています。たとえば、店で働いているスタッフの人となりがわかるような記事や、職人の方の想いにふれた記事を書きたいですね。「この人に会いに行きたい」とインタビュイ―の方に対して思ってもらえるような記事が書けるといいなと思っています。

今、月末の1週間は、新しい仕事を開拓したり、遊びに行って仕事のヒントを得たりする日に充てています。目の前の仕事をコツコツとやりながら、常にアンテナを張り、新しい仕事もどんどん開拓していきたいと思っています。

ライターにオススメしたい書籍

『職業、ブックライター。』上阪徹
著者曰くブックライターには、「ヒアリングする力」「情報を整理する力」「伝える力」の3つの力が必要とのこと。これは、ブックライターに限らず、ライターならば誰でも必要な力です。本書では、書く技術や取材のコツだけじゃなく、時間管理法など気になるコンテンツがたくさん。1,500円でこんなに充実した内容ならば、とってもお買い得!仕事をするとき、いつも傍に置いておきたい一冊。

撮影協力:BOOK LAB TOKYO
撮影:@miya___miya